WPC処理,モリブデンショット(ハイパーモリショット)の一般の方のご依頼、ご相談大歓迎です。小口、中古部品も対応。

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技術資料(続き)

6.金属成品の摺動部の摩擦防止法

研磨材形状の達いによる表面形状(AI材)

〈左図)グリット状の研磨材にてブラスト処埋を行うと、鋭角な突立ちの面形状となり潤滑剤や切削油等の表面張力を切り、効果を半滅させる。
(右図)球状の研磨材にてWPC処理を行うと、円弧状の凹部となり表面張力を助長し、油膜切れを防止する。又、表面から約20μm組織が溶体化、再結晶化、微細化と変化し、表面硬度も80Hvから130Hvに上昇し、内部残留圧縮応力も50MPaから150MPaとなる。表面が面圧に耐える強化された組織となり、油膜を保持し、無接触に近くなり摺動部の摩耗を防止する。
(×100)
(×500)
このササクレがオイルの表面張力をさまたげてしまいます。

三次元測定による表面形状(粉未ハイス)

切削、研削品表面形状(36)にWPC処理を行うと、線状の表面形状が消滅し、円弧状の凹部となり、油膜切れを防止する。(37)尚、表面から10μm強化された組織と成っている。

三次元測定による表面形状(SCM420浸炭窒化品)

シェービング加工品表面形状(38)にWPC処埋を行うと、刃スジ形状が消滅し、円弧状の凹部となり、油膜切れを防止する。(39)無接触に近くなり、ギヤー音も下がり、油温も上らなくなり飛躍的な寿命延長が期待できる。

7.常温拡散、浸透メッキ法

SCM420浸炭品表面のCr浸透メッキ状況

SCM420浸炭品にWPC処埋を行うと、噴射金属粉体のCr元素が表面に浸透しメッキが行われる。浸透メッキが行われる事により、表面の合金化による強化と共に耐食性が向上する。
一般的に析出しやすい金属、Cr、Coは、WPC処埋により拡散、浸透メッキが容易に行われる。

SCM420浸炭品表面のオーダ分析

SCM420浸炭品表層(41)に、Cr、Co、Wを含む金属粉体にてWPC処理を行うと、表層にCr50.4%、Co=0.6%、W=0.25%が拡散、浸透され、表層が強化される。

0.4%炭索鋼表面の浸炭状況

0.4%炭素鋼表面に、C=2.3%を含む金属粉体にてWPC処埋を行うと、表面にCが拡散、浸透され、C=1.2%となり、硬度も上り、強化される。

常温乾式Snメッキ状況

CM420浸炭晶に金属粉体SnにてWPC処埋を行うと、表面にSnが付着する。Snメッキを行うと、初期の潤滑効果及ぴ摺動抵抗が下がり、消昔効果も得る事ができる。

8.WPC処理その他の効果

クロームメッキ等のクラック防止状況

クロームメッキのマイクロクラック発生品(46)にWPC処埋を行うと、マイクロクラックが消滅し、表面硬度も上昇する。(47)

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PVDコーティングの密着強度(ビッカス硬度計50kg)

基材にTiNコーティング、基材+WPC+TiN、基材+WPC+TiN+WPCに圧痕を付けクラックの発生より密着強度を確認した。WPC処理によりPVDコーティングの密着強度が向上する事がわかる。

常温乾式メッキによる模様装飾

グラス棋様装飾メッキ基材に、低融点、低硬度金属粉体にてWPC処埋を行うと、金属粉体が熔融付着のようになり、メッキを行う事ができる。セラミック、ガラス器等においてブラスト彫刻と併用し、模様装飾を行い、WPC処理メッキを行うと、濃淡全属メッキも可能となる。

おわりに

WPC処理は、バブル崩壊後、大手自動車メーカーに本格的に採用されるに至って、国内及ぴ世界から注目されるようになりました。安価で、用途が広く、金属又は金属成分が含まれる物に効果があり、処理方法は単純、コストも安く、比較的効果が大きい。使用条件等により限界がある場合、他の表面改質との多重複合等が容易に行う事ができ、飛躍的な効果を得る事もできます。

徒来は、表面熱処埋法による利用法が主であったが今後は複合処埋として、トライボロジー効果を得る事ができる金属成品の摺動部の摩耗防止法。表面の徴細な略円弧状の凹部を利用する事により油膜切れを防止し、無接触に近づけ、摺動部の摩耗を防止します。又、セメンティーション効果を得る事ができる常温拡散、浸透メッキ法。金属成品の表面に金属粉体を打込み、全属元素を内部に浸透させ、表面を高合金化させ表面を強化させたり、コーティング等の密着強度を高めたり、常温乾式メッキも可能です。

このように今後、益々複合処理の用途が拡大し、産業界全般に貢献ができるものと恩われます。

最後に組織の写真等資料にご協力を頂きました、愛知県工業技術センター殿、中部大学殿、浜松熱処埋工業株式会社殿に深く感謝致します。

(株)不二機販 宮坂四志男氏著「精密ショットピーニングWPC処理について」より抜粋。


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